聖書の勉強【ロシア語】

聖書には日本語訳もあり、英語訳もあり、ロシア語訳もあります。

この場合、例えば日本語訳を読んでその内容を把握している人は、英語訳やロシア語訳ではどんな文章になるのか見当がつかなかったとしても、「内容」は分かっているわけですね。

こういった事は、外国語の学習で使ってもよい事ではないかと思います。

別に、聖書を常に外国語で読めという事ではありません。基本的には、信徒は聖書は自分の母国語で理解すればよいわけです。(それが、スラヴ系の地域に伝道がなされた時の事を含めて、正教での伝統であるとも聞いています。)

他方で、もしロシア語を学ぶのであれば、ある聖書の箇所について「ロシア語ではどういった訳によって表現しているのか?」という事をいくつか知っておくのは悪くないと思います。また、ロシアの人が正教について語る時に聖書の引用を(当然ロシア語で)する事もあるわけですので、その意味でも多少は勉強しておく価値はあるのではないかと思います。

ここでは、2箇所ばかり、ごく短い文を引用して見てみたいと思います。信徒でない人でも、記述している事自体は分かる部分を選んでいます。全文は、引用元などを参照してください。

  • библия:聖書
  • Ветхий Завет:旧約聖書
  • Новый Завет:新約聖書

旧約聖書

まず1つは、旧約聖書のほうの『創世記』を見てみましょうか。

キリスト教徒でない人に結構ありがちな思い込みの1つは、『創世記』と言うくらいだから、世界の「創造」とアダムとエワ(エバ、イヴ)がいた「楽園」の事がひたすら書いてあるの「だろう」・・というものかもしれません。

それらの記述も、もちろん非常に大事であって、正教でも重要視されています。

その一方で、『創世記』にはアブラハム、イサク、ヤコブといった人物等の記述もある事を、忘れてはいけないでしょう。特にアブラハムは、正教でも信仰の模範とするべき人として認識されています。
【日本正教会での表示:アウラハム、イサアク、イアコフ このページでは一般の表記で記します。】

エピソードは色々と書かれているのですが、個人的に印象に残っているいくつかの場面の「1つ」を取り上げたいと思います。

次の一節は、とある「井戸」についての争いの場面でのイサクの対応です。

И копали рабы Исааковы в долине и нашли там колодезь воды живой.
И спорили пастухи Герарские с пастухами Исаака, говоря: наша вода. И он нарек колодезю имя: Есек, потому что спорили с ним.
выкопали другой колодезь; спорили также и о нем; и он нарек ему имя: Ситна.
И он двинулся отсюда и выкопал иной колодезь, о котором уже не спорили, и нарек ему имя: Реховоф, ибо, сказал он, теперь Господь дал нам пространное место, и мы размножимся на земле.

http://www.russianbible.net/Gen-26.html より【創世記26.19-22】

Господь は「」の事です。

これは何の場面かというと、井戸を掘ったら、別の人達がやって来て横取りしようとしたんですね。そこでイサクはどうしたのかというと、別の井戸を(しもべに)掘らせました。しかしその井戸が掘り当てられるとそこでも争いが起きたので、イサクはまた別の井戸を掘らせ、それを繰り返しているうちに、しまいには争いは止んだとの事です。

колодец, долина, пастух, копать 等の単語です。

この箇所についての解釈をこの場であれこれ述べる事はあまり良くないと思っているので、解釈を述べる事はやめますね。正教会でも聖書を読む事は大事で(聖伝の中の重要な柱が聖書であるという認識のはずなので)、ちゃんと読むようにと個人的にも言われてもいますが、基本的には司祭の方々等の話と解釈を聞く事が大事だとも思っています。

ただ、こういう問題に対してイサクという人物がどういう対応をしたのかという点で、井戸についてのこの話は個人的に印象に残っている場面の1つです。

では、ロシア語訳ではどういう表現がなされているのか、重要な単語等を整理してみましょう。

  • 【固有名詞】人名・・イサク:Исаак 地名・・ゲラル:Герар
    他・・エセク(争い)、シトナ(敵意)、レホボト(広い場所):Есек, Ситна, Реховоф
  • 【名詞・物】колодец:井戸 долина:谷 вода:水 имя:名前 место:場所、席
  • 【名詞・人】раба:僕、召使い【「奴隷」の意味も】
    ★ より一般的な「召使い」「使用人」を指す語として слуга, служитель があります。
    пастух:羊飼い
  • 【動詞】копать:掘る
    найти:見つける、発見する【→ нашли】【находить:起こる、ある】
    спорить:話し合う・議論する(≒обсуждать)、ここでは「争う」等の意味
    выкапывать【完了体:выкопать】:копать と大体同じだが「掘り当てる」的な意味合い。
  • 【形容詞】живой:生きている、鮮やかな、豊かな、ライブの・・等の幅広い意味がある。другой:他の、別の(≒ иной
    【副詞】отсюда:それゆえに、それで уже:既に、ここでは「もはや」など теперь:今
    【接続詞】и:~と、そして【英:and】 ибо:~であるから、~ゆえに 
  • наречь:名付ける【やや古い語】→нарек, нарёк【男性用の過去形】
    ★ より一般的な「名付ける」は называть
    двигаться:動く、移動する【完了体:двинуть】
    ★ 物を「動かす」などは передвигать
    пространный:【やや古い語】広い、広大な

個々の単語の意味さえ知っていれば、かなり平易に書かれた文章である事が分かるのではないかと思います。

こういった外国語で書かれた文章を勉強する時には、まず全体を見て自分の知識で分かるものは拾ってみて、知らない表現については調べてみるという方法が割と良い方法かもしれません。

新約聖書

新約聖書は、イイススが(人の体として地上に)誕生してからの出来事や、使徒たちによる書簡等を集めてまとめたものです。(従って法典のようなものではありません。)

■人名の日本正教会での名称と一般の名称の対応:イイスス→イエス ペトル→ペテロ パウェル→パウロ

4つの福音書はイイススの誕生から十字架上での刑死と復活までを記した話で、その後の使徒たちによる宣教の様子が『使徒行実』(使徒言行録)に記されています。それと、パウェルによるものを中心とした色々な書簡があり、最後に黙示録があって終わる構成になっています。

さて、注目すべきところはたくさんあるわけですが、有名どころ以外で個人的に印象に残っているところを敢えて挙げると、例えば『使徒行実』の中のペトルの何気ない一言が個人的には結構印象に残っています。

これは「私も人間である。」というものなのですが、ロシア語訳ではどういう表現になっているでしょう?

Когда Петр входил, Корнилий встретил его и поклонился, пав к ногам его.
Петр же поднял его, говоря: встань; я тоже человек.

http://www.russianbible.net/Act-10.html より【 使徒行実 10.25-26】太線は当サイト管理人による

はい、同じものを訳しているので、基本的には同じですね。これは、エルサレムの北西、地中海に面した「ヤッファ」という町での事と書かれています。場面の記述の箇所なので、何か難しい理屈を論じているわけではなくて、文章自体は平易だと思います。

  • входить:【建物などに】入る
    ★ выходить:【建物などから】出る
  • встретить:会う、出会う кланяться:おじぎをする【完了体:поклониться】
  • падать:落ちる、倒れる(ここでは「ひれ伏す」) 【完了体:пасть】→ пав【副詞的】
  • человек:人間 говорить:言う тоже:~も、~もまた
  • встань:встать の命令形【「вставать:立つ、起きる」の完了体が встать】
  • поднимать:上げる、持ち上げる、増やす(ここでは「起こす」)【完了体:поднять】
パレスチナ周辺の地図の概略です。
Мёртвое море:死海(塩分濃度が非常に高い湖)
Средиземное море:地中海
Красное море:紅海

ロシア語の1つの文章としては、もちろん動詞や名詞の形を用途に合わせて変化させて使っているので、それを踏まえて読む形になります。簡単な表現から始めて、慣れていきましょう。

さてじつは、同様の発言はパウェルによるものも記されています。これは小アジア(現在のトルコ)のリストラという町での事とされ、そこの人々が奇跡を見て信じたのはよかったのですが使徒たちの事をギリシャ神話の「神々」の名で呼び始めたので戒めてやめさせたという話です。ここでは、パウェルと一緒にワルナワ(バルナバ)という人物がいます。

Но Апостолы Варнава и Павел, услышав [о сем], разодрали свои одежды и, бросившись в народ, громогласно говорили:
мужи! что вы это делаете? И мы–подобные вам человеки, и благовествуем вам, чтобы вы обратились от сих ложных к Богу Живому, Который сотворил небо и землю, и море, и все, что в них,

http://www.russianbible.net/Act-14.html より 【 使徒行実 14.14-15】太線は当サイト管理人による

ペトルとパウェルは、使徒たちの中でも特に重要人物であるとみなされている人達です。そのような人達の発言としてこのようなものがある事は、個人的にはかなり印象的です。

  • подобный:同じような、似ている、そのような
  • разобрать:【機械等を】分解する (ここでは「引き裂いた」)
    броситься:身を身を投げる、駆けつける → бросившись【副詞的な用法】
    ★ бросить:投げる
    делать:~をする、行う 【完了体:сделать】
  • одежда:服 народ:人民、民衆【ここでは群集、集まった人達】
  • ложный:正しくない、誤った(≒неправильный, ошибочный)
    сей:【古語】これ(≒этот)
  • благовествовать:福音を伝える благо:よい事、祝福、利益
  • творить:造る、創造する 【完了体:сотворить】
небо, земря, море 等の単語です。
одежда

聖書の記述は、全体としてはかなり長いもので、これらはその中のほんのわずかな一部に過ぎません。

教会でのお祈りと聖書は切り離されているものではなくて、お祈りの中で聖書の内容が読まれたり聖書の中の言葉を歌ったりします。ですので、教会に行ってお祈りをするという事は聖書の内容を聞き、聖書の言葉を口ずさむ事でもあると言ってよいのではないかと思います。(今年は、場所としての教会に行く事に対してかなり問題が発生しているわけですが・・。)

今年2020年は全体的にひどい年になってしまっているように思いますが、忍耐強く頑張りましょう。

関連記事

当サイトで正教に関連する記事は次のものがあります。

ロシア語の接続詞や代名詞に関する記事は次のものがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です