今回はロシア語の基本表現、「これ」「それ」「この」「その」「あれ」「ここ」「あそこ」・・などの「指示詞」や「指示代名詞」をまとめます!
目次:
- 「この・あの」「これ・あれ」 это, то・・英語の this, that に相当する語です。
- 存在「~がある、いる」の表現・・英語の there is ~などです。
- 存在の否定形の表現「~がない」・・не, нет の使い分けと名詞の格変化に注意!
- 存在に関するその他の表現「~がたくさんある」など・・名詞は生格にします!
今回学習する内容の特徴として、「えー、こんな簡単な事言うのにもこんなめんどくさい文法があるの~???」と感じるようなところがあるかもしれません!
管理人と一緒に、地道に少しずつ把握してまいりましょう!!
★「これは・・です」とか「そこに・・がある」という表現は、大抵は最初にやるものという先入観がありがちだと思いますが、これまで敢えて飛ばしてました!!(必要に応じて多少は触れましたが。)
なぜかというと、例えば英語の場合で悪名高い「This is a pen.」「There is a pencil.」のような文章は、あまり好んで学びたいものではないからでした!
そういう学び方をしてしまうと外国語が上達しない・上達が遅れてしまうという事は、日本の学校での悪しき英語教育を通じて、多くの人が認識なさってるはずです!!
そのために、どちらかというとこれまでは他の文法事項や、単語の学習を重視してきました。
しかしここらで、指示代名詞などについても、まとめて整理したいと思います!
「この・あの」「これ・あれ」 это, то
ではまず、「この」とか「あの」とかをロシア語で何と言うかを見ましょうね。
■ 基本的な考え方 ■ это「この」と то「あの」の格変化
基本的な考え方
結論を先に言いますと、это【エータ】:「この」または то:「あの」を名詞にくっつければOKです!
・・なのですが、ロシア語ではこれらを名詞の性別や、文中の役割(「格」)によって変化します!
- 名詞の性別:男性・女性・中性・複数形
- 格:主格・対格・生格・与格・造格・前置格
具体的な格変化の詳細は下記で表にまとめていますが、いくつか具体例でどういう変化をするのかを見てみましょう。
■主格(主語で使う場合):
этот город:この町【男性】 эта страна:この国【女性】 это море:この海【中性】
■生格(「~の」を表す)での例:
карта этого города「この町の地図」 карта этой страны「この国の地図」 карта:地図
■造格(「~による」を表す他、特定の前置詞の後で使用)の例:
между этим домом и тем зданием 「この家とあの建物の間に」 между:~の間に【前置詞】
これらの、этот、эта、это、этого、этой、этим、・・は、全て日本語に訳せば「この」であり、英語に訳せば「this」という一言で終わるものですが、ロシア語ではこのように微妙に形を変える必要があるわけです!(※ロシア語に限らず、現代英語以外のヨーロッパの言語ではよくある事です。)
ロシア語で様々な格変化をする語は、これら指示代名詞に限った話ではなくて、名詞やら形容詞やら、じつに多くの語が格変化をします。名詞の格変化については、前置詞をまとめた記事の中の一覧表に記してあります。
★ 「これは~です」Это ~. の場合は、格変化なし!
かなり面倒ですよね!ただし、目の前のものを指して「これは~です。」と言う表現は例外的に、一貫して это ~ . と言えばいい決まりになっています。
対象の性が何であっても это ~ . と言う事になっています。
「これは~ではない。」の場合は間に это не ~ . として、 это や名詞の変化は特にありません。また、「あれは~です」は то ~ . で、 これも対象の性に関わらず то の形を用います。
★ это や то は「これは~です。」「これは~ではないです。」「あれは~です」
「あれは~ではない」という表現の場合、名詞の性別による格変化をせず、
一貫して это および то の形を用います。
- Это уссурийский тигр. これは「ウスリー虎」(シベリアトラ)です。
- То река Уссури. あれはウスリー川です。
- Это бурый медведь. これは「茶色熊」(ヒグマ)です。
- То Уральские горы. あれがウラル山脈です。
- Это не питание. これは食べ物ではありません。
- То не море.То озеро. あれは海ではありません。湖です。
また、「これは何ですか?」と尋ねる時も、что【シトー】「何」と это を単純に組み合わせて
Что это ? と言えばよく、格変化や性別による変化を特に気にしなくてもよいようになっています。
他方で、「この町がモスクワです」のように言う場合は、「この」の部分は普通に変化するわけです!
Этот город ― Москва.
ダッシュ記号「-」は書く時だけにつけられ、発音はしません。
名詞の片方が代名詞である場合は、通常はダッシュ記号は省略されます。

Что это ?「何これ?」 Это броненосец .「これはアルマジロだね。」
動物に関するロシア単語についてはこちらのページで詳しくまとめています。
★ то に関しては、後述する есть「いる、ある(現在形)」を用いて
то есть と言った場合は、「つまり」の意味で用いられます。接続詞的に用います。
英語の That is, ・・「つまり、・・」という用法に似ています。
это「この」と то「あの」の格変化
это「この」と то「あの」の 、名詞の性別と格による変化を表にまとめておきますね。もちろん、一度に暗記するというよりは、適宜参照して少しずつ覚えていくのがよいと思います。
格\性別 | 男性 | 女性 | 中性 | 複数 |
---|---|---|---|---|
主格 | этот「この」 тот「あの」 |
эта та |
это то |
эти те |
対格 ≪活動体≫ |
этого того |
эту ту |
это то |
этих тех |
対格 ≪不活動体≫ |
этот тот |
этих тех |
||
生格 | этого того |
этой той |
этого того |
этих тех |
与格 | этому тому |
этой той |
этому тому |
этим тем |
造格 | этим тем |
этой той |
этим тем |
этими теми |
前置格 | этом том |
этой той |
этом том |
этих тех |
★ 対格のところの「活動体」とは名詞が人・動物の場合で、「不活動体」とは名詞がそれ以外の物などの場合の事を指しています。
生格・与格・造格・前置格は男性と中性が同じ形、女性名詞は生格・与格・造格・前置格の形が同じなど、それなりに特徴はあるのですが、いやあ、それでも分かりにくいですね!与格の複数形と、造格の男性・中性(単数)が同じであるなど、試験に出されたらいかにも間違えやすそうですね。
★こういうものを学ぶ時には、名詞の性別については具体的にロシア語にはどのような名詞があるのか、格についても具体的にどう使うのかを先に知るほうがよいと思い、管理人の場合はそちらをまず優先しました。
指示代名詞についてこれまで敢えて体系的に整理しなかったのは、そういう理由もあります!
指示代名詞 это は、目の前でこれがある、あれがあると言う時の他に、「今週」とか「今月」「今年」と言う時にも使います。(これは、英語で this year, this month, this year などと言う習慣に似ています。)
他方、「今週に」「今月に」 「今年に」 などと言う場合には это を使うのは同じですが、それぞれ微妙に表現が異なります。前置詞は 「今週に」では を使い、 今月に」 「今年に」 では в を使います。また、各表現で это と「週」「月」は前置格にしますが、「今年に」と言う場合だけは、「年」を与格にします。これもまたややこしいですね!
- 「今週」это недел → на этом неделе 【 этом неделе :共に前置格】
- 「今月」это месяц → в этом месяце 【 этом месяце :共に前置格 】
- 「今年」это год → в этом году「今年に」【 этом :前置格 году:与格 】
存在「~がある、いる」の表現
ロシア語では быть「いる、在る」という動詞があり、これを使う事で「~がいる、~がある」(英語の there is ~など)を表現できます。ただ、この動詞の現在形は性別・単数複数に関わらず一貫して есть という形にするなど、少し分かりにくいところもありますね。
■ 現在形の存在:「~がある」「~がいる ■ 過去形の存在:「~があった」「~がいた」
■ 未来形の存在:「明日~がある」など
現在形の存在:「~がある」「~がいる」
まず、現在形の場合の表現を見ましょうね。名詞の部分は「主格」(つまり主語の時と同じ)にします。また、前置詞や副詞によって場所を表す語句を文頭に添える事が多いようです。
現在形で「~がいる」「~がある」を言うには次のようにします。
В Москве есть зоопарк . モスクワには動物園がある。
В этом номере есть телефона и телевидение. この客室には電話とテレビがある。
На столе есть кошка. テーブルの上に猫がいる。
Москва:モスクワ зоопарк:動物園(парк:公園)
номер:番号、客室(一般の「部屋」は комната) телефона:電話 телевидение:テレビ
前置詞の種類や扱い方については、以前の記事で詳しくまとめています。
★「あそこに」там 「ここに」здесь
「あそこに」(英:there)は、 там と言います。 есть と組み合わせて用いる事ができます。
Там есть кошка!あそこに猫がいる!
それに対して、「ここに」 (英:here)は、здесь と言います。
★ 大変紛らわしいですが、 то「あの」の格変化の中に том 【男・前置格】や тем 【男・造格】はあるけれど、「там はない」ですね。
なので там と言ったら必ず「あそこに」の意味の副詞であるわけです。想像ですが、ロシアの現地の小さい子とかもこういうの書き間違えそうですね。
★「у ~ есть・・」で、転じて「~は・・を持っている」を表す
また、文字通りに読むと「誰々のところに~がある」となる表現は、転じて「誰々が~を持っている」という意味になります。この時用いられる前置詞は у であり、その後に代名詞(「生格」にします)を続けます。
У меня есть брат и сестра. 私には兄と姉がいます。
У вас есть ластик ? 消しゴムある?消しゴム持ってる?
★「消しゴム持ってる?」と聞かれて、
「うん、あるよ」「はい、あります」と答える場合は、Да, есть. と言います。(да:はい、yes)
逆に持ってない場合は、後述の「~がない」の表現と関わりますが、Нет, у меня нет. という感じになります。(нет:いいえ、no ただし、ここでの2番目の нет は「~がない」の意味)
過去形の存在:「~があった」「~がいた」
過去形にして「~があった、~がいた」にする場合は、
быть の形を過去形にして、名詞の性別に応じて был была было были を使って表現します。
この変化は、通常の動詞の過去形の作り方と全く同じになります。
быть の過去形は、主語となる名詞の性別(男・女・中)と複数形の4種の形にします。
複数形の場合には男・女・中を区別せず一貫して1つの複数形の形になります。
- 主語が男性:был
- 主語が女性:была
- 主語が中性:было
- 主語が複数:были
★主語の「人称」は関係しないので注意。通常は性別を区別しない「私」「君」なども、過去形の場合は動詞のほうで性別が区別されます。上述の通り、この規則は通常の動詞の過去形にも適用されます。
На столе была кошка. テーブルの上に猫がいた。
В машине был мальчик. 車の中に男の子がいた。
машина:車、自動車
В комнате были мальчик и девочка. 部屋の中に男の子と女の子がいた。
В этом деревни ранее было озеро. この村にはかつて湖があった。
ранее:以前は деревня:村 озеро:湖
★ 名詞の性別については、ここで用いている単語については「語尾」で判定します。
「子音で終わる」→ 男性 「 а で終わる」→ 女性 「о で終わる」→ 中性
複数ある場合はそのまま複数形、という感じです。また、「男の子」のように明らかに意味的に性別が決まっている場合は、それによっても名詞の性別が決まります。

В комнате было окна. 「部屋には窓があった。」
今現在の事だけでなく昨日やおとといの話をする事もあるだろうし、小説や物語では文を過去形で語るのが普通です。そのため、過去形で「~があった」という表現は意外と重要だと思います。
★「そういうものは存在しない」「いや、それは確かに存在する」などの意味などで用いる場合の
「存在する」は、существовать と言います。
これの名詞形「存在」は существование です。
未来形の存在:「明日~がある」など
「明日は授業があるだろう・・」などの未来形の場合は、быть の未来形の形が主語の人称と単数・複数に応じて6つあるので、それを使います。これらは、通常の動詞の「不完了体」のほうの未来形で使うものと同じです。
быть の未来形は、主語の名詞の人称と単数・複数によって決まります。
※過去形の場合と違って「性別」は関係なくなるので注意!
- 主語が単数・・1人称:буду 2人称:будшь 3人称:будет
- 主語が複数・・1人称:будем 2人称:будете 3人称:будут
★以下に述べるように「~がある」の表現では重要なのは3人称の形です。ただし、通常の動詞の未来形を表す時には1人称や2人称の形も用いられます。
この通り6通りの形があるわけですが、「~がある」の未来形として使う場合、実際問題としては『3人称』を使う場合が圧倒的に多いかとは思います。
「明日授業がある」と言うことはあっても、「明日君がある、私がある」・・とは基本的には言わないですね。ですから、「明日~がある」などと言う場合には、実質的に3人称の単数と複数だけの区別に注意すればよいわけです。
現在形で「~がある」と言う時の есть の部分を、будет や будут で置き換えて表現する形になります。
Завтра будет первое занятие. 明日、最初の授業があります。
завтра:明日【副詞】 первый:最初の занятие:授業
存在の否定形の表現「~がない」
はい、という感じなのですが、これで終わりにせずに、もっと考察を進めます。
「~がない」「~がなかった」などの、存在の否定形の表現方法を見てみましょう。
■ 現在形の場合の存在の否定:「~がない」
■ 過去形と未来形の場合の存在の否定:「~がなかった」等
現在形の場合の存在の否定:「~がない」
まず現在形の場合です。「この建物にはトイレがない」「この部屋には窓がない」 ・・などの、
「~がない」という表現は意味としては重要ですが、結構くせものです。この場合、次のようにします。
- 現在形では名詞の性や単・複に関わらず есть のところを нeт に変える。
- 名詞は「生格」にする。
В этом комнате нет окна. この部屋には窓が無い。
это комната「この部屋」 → этом комнате【前置格】 окно「窓」→ окна【生格】
В этой стране нет моря. この国には海が無い。
это страна「この国」 → этой стране【前置格】 море「海」 → моря【生格】
この表現自体はとてもシンプルですが、一般的な否定の表現は次のようにするので区別も必要です。
- 「はい」「いいえ」の「いいえ」は нет と言う:
Ты россий? Нет. 「君はロシア人?」「いいえ。」(「はい」は да ) - 通常の動詞を否定する時は 動詞の前にне をつける。(他動詞の場合、否定する時の目的語は生格にするという点は「~がない」の場合に似ています。)
慣れないとちょっと紛らわしいですね!
過去形と未来形の場合の存在の否定:「~がなかった」等
では、過去形や未来形の存在の否定の表現「~がなかった」「明日~はない」等についても見てみましょう。
じつは、この場合は、通常の動詞の否定表現と同じく、「не を動詞の前に置く」という表現をします。
(※ нет ではなく не です。紛らわしいですね!)
注意点として、この過去や未来における存在の否定の場合には、
人称・性別などに関わらず、ある1つの同じ形を必ず使う・・という決まりがあります。
есть のように、「性別や人称によって変化『しない』」・・という規則であるわけです。
- быть の過去形は必ず「中性の過去形」 было を用いる。
- быть の未来形は必ず「3人称・単数の未来形」 будет を用いる。
В комнате не было кошка. 部屋の中に猫はいなかった。
★ кошка が女性名詞だが、否定の場合には была ではなく было を用いるというわけです。
Завтра не будет экзамены ! 明日は、試験はありません!
★ экзамен → экзамены【複数形】にしているが、
否定の場合はбудут【3人称・複】 ではなく будет【3人称・単】 を使うという事です。
「形が変化しない」というのはそれはそれで分かり易いのですが、肯定の場合は変化するが否定の場合は変化しない・・などとなると、きちんと覚えてないと試験では間違えてしまいますよね!!ややこしい~!
存在に関するその他の表現「~がたくさんある」など
最後に、「あそこに猫がたくさんいる」「カゴの中にはりんごが3つあった」などと言う場合です!
この場合、基本的には「たくさんの」とか「何個の」といったものがない時と扱いは同じです。例えば、現在形の存在であれば「たくさんの猫」の部分は「主格」にすると考えます。
・・が、ここで問題があって、 「たくさんの猫」 という部分を「主格」として扱う場合、「猫」の部分は「生格(複数形)」にするのです。
これは存在の表現に限らず、「たくさんの」「少しの」などの数量を表す語や、「1個」「2個」・・などの個数詞に続く名詞に対して行われる格変化です。
これは正直、分かり辛いと思います。しかし、「猫がたくさんいる」のような簡単で、時に重要でもある表現ができないのは困りますから、ぜひ管理人と一緒に学びましょう!!
「あそこに猫がたくさんいる!」と言う場合は、 「たくさんの猫」の 「猫」の部分だけが「生格」になる事に注意すればよいわけです。 「たくさんの」(の主格の形)は много と言います。
Там есть много кошек ! много :たくさんの кошка → кошек【生格・複数】
この表現の仕方は、мало「少しの」немоного「多くない」を用いる場合でも同じです。ただし、время「時間」рабрта「仕事」などの「複数形を用いない」名詞が対象の場合、名詞は「単数形の生格」にします。分かりにくいですね。
個数詞(1,2,3・・)を使う場合もここで見ておきます。
Там есть две кошки. 「あそこに猫が2匹いる。」
две:2【女性用】(男性・中性用は два) кошка → кошки 【生格・単数】
「あそこに猫が2匹いる」などの場合は、個数詞に続く名詞の「主格」の場合の格変化の規則を適用します。「2匹の猫」であれば、「猫」の部分は単数の「生格」にします。
(※「5以上」であれば「複数・生格」にします。)
この格変化の詳細は、個数詞に続く名詞の格変化の記事で詳しくまとめています。
また、名詞の格変化自体は、前置詞に関するまとめで表にしてあります。

Там есть пять кошек ! пять:5(名詞の性に関わらずこの形)
この場合の「ネコ」の部分の形は、「たくさんの『ネコ』が」と言う場合と同じ形です。
「雄のネコ」кот を使うのであれば Там есть пять котов. になります。
大変ややこしいですが、この場合は名詞の部分「猫」を「生格の複数形 」 にするのです。
英語では This is (was, are, were) ~ There is ~ の簡単な表現が、ロシア語では結構大変ですね!でも、意味としてはこんな簡単なものが表現できないのは困るでしょうから、地道に覚えて行きたいですね!
それでは、今回はこれで終わります! ご覧いただき、ありがとうございます!
参考文献・参考資料
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